「思っていたより〇〇だった」在宅訪問看護のリアル 前編

看護師の働き方

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看護師のみなさん、今日もお疲れ様です。

これを読んでくださっている方には、訪問看護に興味がある、訪問看護への転職を選択肢に入れているという方もいるのではないでしょうか。

私は病棟から在宅訪問看護の会社への転職を経験しました。

転職前は、在宅訪問看護のイメージは「家に訪問して看護を行う」というざっくりしたものしか持っておらず、実際にやってみると、「思っていたより〇〇だった」という入職後ギャップがいくつかありました。

それは良い面でもあまり良くない面でも。

訪問看護を経験できて良かったし、後悔はしてないけど、転職前に知っておいても良かったかもと思ったことがありました。

「在宅の訪問看護って実際どんなものか知りたい」

という方に向けて

『在宅訪問看護の「思っていたよりも〇〇だった」』の前編として、今回は5つご紹介したいと思います。

(※一部、私個人の見解もあります。私の勤務先の特徴をもとに記したものであり、すべての訪問看護事務所がこの通りとは限りませんのでご了承ください。)

1.思っていたより「治療より利用者の生活や意思を優先」だった

▶まずは訪問看護の簡単な説明↓

「施設内訪問看護」・・・施設内の各部屋を訪問して看護サービスを提供する。

「在宅訪問看護」・・・利用者の自宅間を移動し、在宅での看護サービスを提供する。


利用者が自分の住み慣れた家で安心して過ごせるように支援できることはやりがいのあることだと思います。

その支援をするにおいて、在宅はその人の「生活の場」であって、病院のような治療優先の場ではない

ということを念頭に置いておくことが大切です。

療養生活を送るためにもある程度の生活指導は必要ですが、個人の状況によって必要性やその程度も変わります。

いくら看護師が専門的に正しいことを利用者に伝えても、それを実行するかどうか最終的に決めるのは利用者本人またはその家族であり、看護師はその意思を尊重する必要があります。

それに関して私が経験した中から2つエピソードをあげて紹介します。

エピソード1. 訪問の度に同じ質問をしてくるが、結局納得できず自分のやり方を変えない利用者

便秘をひどく気にしている高齢の利用者がおり、かかりつけ医から便秘薬を複数処方されていました。

その方は排便が無かったり量が少なかったりすると、一度に通常の用量より倍多く飲むことが頻繁にあり、それを連日繰り返していました。

その方は「この飲み方で良いのかな」とほとんど毎回質問してくるので、

私は「飲み過ぎると副作用の心配もあるので、せめてもう少し通常の用量に近づて飲んだり、次回かかりつけ医に受診の際に相談してみてはどうですか?」と提案しますが、

その方はいつも「うーん」と納得できない様子で、結局私の意見はあまり参考にされていないのか、飲み方を変えることはありませんでした。

このやりとりを本当にほとんど毎回するのです。一応、認知症ではなくその人のキャラクターだと思います。

正直な気持ちとして、このやりとりはもういらないのではないか、と思ってしまったこともあります...(;’∀’)

私がその方の求めている答えを与えられていないだけと思い、他の看護師にもどうしているのか聞いてみたところ、

私と違う方向から答えを返しているようでしたが、結局どの看護師の話にも、その方は「うーん」と微妙な反応であったとのこと。

先輩にそのことを相談すると、

まあ病院じゃないから無理強いはできないしね。一応訪看(訪問看護)としては、きちんと知識は提供しましたよということはしっかりして、記録に残していければいんだと思うよ。あとは本人がどうするか、自己責任。」

ぶっちゃけた話でしたが、それを聞いた時なるほどと思いました。

転職して間もない私はまだ病院勤務時代の感覚であり、「薬はきちんと飲んだ方が良いと分からせなければ!」という考えが残っていました。

しかし、治療を強制されない自宅ではどう生活するか、どう内服を飲むかは最終的には本人が決めることなのでした。

看護師が利用者の考え方を無理に矯正する必要はなく、無理に矯正しようとすると、関係性が悪化し、最適な看護ケアができなくなる可能性もあります。

このエピソードの利用者に対する最適なケア、またはニーズは、正しい便秘薬の内服方法を指導するのではなく、「受容・傾聴しつつ排便や内服の状況による健康状態をすること」で良かったのかなと思いました。

結果的にその利用者は体調が特に悪化することはなかったため、現状維持、経過観察で見守ることとしました。

例2 お酒、たばこ 好き放題

お酒やたばこの嗜好品は好む方は割といますが、それが極端に量が多い方もいます。

健康には良くないですが、これも病院ではないので、「体にあまり良くないのでほどほどにしてくださいよ~」と言うくらいはしますが、「やめてください」と強制したり、がっつり指導まではできません。

しかし、利用者が指導や知識提供を望む場合はするべきだとは思います。

これもその方の生活で大切にしているものだと思うので、せっかく家にいるのに無理に制限されたりしたら嫌ですもんね。


以上のように、

★訪問看護師は利用者のお宅、生活の場にお邪魔する立場なので、その人の生活スタイルや価値観を否定せず尊重した上でできる支援をするということを念頭におく必要がありました。

2.思っていたより「じっくりケアする余裕がない場合もある」だった

訪問看護は、利用者にケアできる時間がしっかり確保されており、病棟のように、途中で急に他の患者の処置や入院などが入って後回しにするなんてことはありません。

病棟では一人一人にゆっくりケアする時間を割けないことが多いです。

私は、それは患者がかわいそうだ、もっとちゃんとケアしてあげたいと思ったことが何回もありました。

そういう理由もあり、訪問看護に転職したのですが、「実際はそんなにじっくりケアできる余裕がないというパターンも多いな~」と感じました。

その理由を挙げてみます。

2-1.To Do(することリスト/ケア内容)が多すぎる

利用者に必要なケア、または利用者や家族から求められるケアが多いと、

・限られた訪問時間内ですべて終わりきらず、訪問時間オーバーして次の訪問に遅れちゃう

・ケアをペースアップしなければならず、じっくりケアしたり話したり関わる余裕がなくなる

・やり残しが出てしまい、またお宅に戻らないといけなくなり時間ロスしちゃう場合がある

なんてこともあります。

例えば、

ある利用者のTo Do(することリスト)が「清拭、陰部洗浄、更衣、シーツ交換、創部処置、移乗や移送介助など、、、」これを全部するとなった場合

これらを30分以内で一人でしなければいけないとなるとかなり大変です。

(訪問看護は一回30分、一人で訪問することが多いです。

利用者の状態によっては一回1時間の場合や、看護師二人で訪問の場合もあります。)

2-2.利用者の介助量が多すぎる

要介護度が高い利用者には、それだけケアに時間がかかります。

看護師一人で介助量が多い利用者のケアをこなすのはけっこう重労働で、二人の場合でも大変なことが多いです。

2-3.利用者の家の構造的に効率的にやりづらい

例えば、

・全介助の方のケアの時、本当はベッドの反対側にも回ってやりたいのに、ベッドが壁沿いの配置のため回り込めず体勢がきつくてやりづらくて時間がかかる

・家が狭い、または物が多くて歩きづらくて時間ロス

なんていうこともあります。


以上の理由により、私も訪問中気づけば余裕なく必死な顔してケアしてたということもよくあります。。。

(もちろん、To Doが少ない利用者、介助量が少ない利用者に対しては、基本ゆとりを持ってじっくり向き合うことはできます。)

そうとはいえ、雑なケアをすると利用者に不快感や苦痛を与え、クレームにもつながります。

大変なこともなるべく表に出さず、迅速かつ丁寧なケアが求められます。

大変ではありますが、慣れてくるとだんだん丁寧かつスピード感あるケアができるようになり、そういったスキルが身につくのだと前向きに捉えることができます。

ケアを終えて利用者から「ありがとう」と言ってもらえると嬉しいので、頑張って良かった、また頑張ろうと思えます。

3.思っていたより「事務職員がいないと大変」だった

私が転職した訪問看護の会社は、各地に事務所(支店)がありますが、その中で私の所属事務所には事務職員がいませんでした。

本部にはいるのですが、管理部や総務としての別の業務をしています。

なぜ事務職員がいないかは、オープンしたての会社だったり、会社の方針でコストカットのためというように理由は様々だと思います。

(うちの場合は、おそらく後者の方かな?・・・(;´・ω・))

そのために大変だと思ったことは2つあります。

3-1.書類作業

事務職員がいないと、指示書や提供表の送付依頼と内容確認、利用者ごとの書類管理、利用者との契約書類のやり取りなどの事務作業も看護師がしなければいけません

私のいる事務所は利用者が80~90人ほどいたので、その人数分の書類作業を訪問の合間にするのは結構大変でした。

しかも訪問の合間なので、移動時間も必要でまとまった時間がとれにくく、ちょこっとずつしか作業が進まないのがもどかしい。

訪問件数が多くて忙しい時期(1日7~8件訪問)には勤務時間内に事務作業する時間が確保できないので、残業しないといけない時もあります。

しかしメリットを挙げるとすると、そのおかげで、どのような書類があり、それがどのように処理されるのか、訪問看護の仕組みにも詳しくなれます。

3-2.電話対応

(私の会社の場合、スタッフ全員がスマホに電話のアプリを入れ、電話がくるとアプリを通して全員に着信が入るようになっています。電話は誰がとってもOK)

訪問先でのケア中や車で移動中に、利用者や病院、ケアマネなどから電話がかかってくることがよくあります。

しかし手が離せない時には電話に出ることができないことも多いです。

「事務さんがいて電話とってくれたらいいのにな」と思うことがよくありました。

ここでもメリットを挙げるとすると、自分で電話対応することで、利用者やケアマネ、往診先と直接話す機会がつかめ、自らの電話対応スキルがあがり、常に報・連・相がしやすくなりました。


私の務める会社の事務所のうち、事務職員が配置されている事務所では、事務作業や電話対応は基本事務員がしてくれるため、看護師は訪問に専念できていました。

それはとてもうらやましかったです。


※しかし、これがそれほど負担にならない場合もあります。以下の通りです↓

・スタッフの数が多いため、無理ない作業量に分配できる。

・そもそも利用者の数が少ないと、事務作業量も少ない。訪問スケジュールにも余裕があるため、作業時間が確保できるし、電話もとりやすい。

4.思っていたより「残業のパターンもあり」だった

訪問看護の残業時間は病棟勤務の時に比べたら少なく、定時であがれる日が多い方だと思います。

しかし、以下の場合、残業しないといけない時もありました。

①「目次3.」でお話した通り、事務作業をしなければならない

②利用者の急変などトラブルで訪問スケジュールがおしている

③退勤時間目前で緊急訪問に呼び出される

②、③は頻度はたまにあることであまり頻繁ではありません。

①は忙しさの度合いにもよりますが、毎月ちょくちょくあります。

私は子どもの保育園のお迎えがあるので、定時で退勤させてもらってますが、残業が必要な日には他のスタッフが残ってくれて、罪悪感がありました。

残業できる人が残業している状態です。

でも夫がたまに保育園にお迎えに行ける日は私も残業していました。といっても月1~3時間くらいです。

私の勤める事務所の求人には「残業ほぼなし」とありましたが、実際は↓

残業が少ないスタッフ(または時期)だと月1~5時間程度

少し多いスタッフ(または時期)だと月10~15時間程度

うちの事務所の管理者は事務作業の仕事を家に持ち帰ってやっている感じなので、

管理者はさらに残業しているようで、月30時間以上の月もあるようです。

求人票の「残業ほぼなし」というのは「月10時間前後」という意味だったのだろうか、、、とも考えてみたが分からない。

でもそれも事務職員がうちの事務所にもいてくれたなら、みんな本当に残業ほぼなしが実現したんだろうな...と思いました。

「残業ほぼなし」がどれほどの程度なのかは会社によって違うと思うので、気になる方は転職前に要チェックですね。

5.思っていたより「記録の仕方や空き時間の過ごし方は自由」だった

5-1.訪問の記録作業はいつでもどこでも可能

私の職場は支給されたタブレットで記録しているので、時間や場所を固定せず記録することができるというメリットがあります。

時間的に事務所に戻ることが難しい場合、記録するタイミングや場所を自由にできるのは働きやすいと思います。

私の場合、最終訪問後は急いで子どもの保育園のお迎えに行かなければならず、

すぐに記録を書けないこともあります。

そのため、帰宅後に子どものことや家事で先にすべきことを一通り終えた後に記録することもできています。

(※至急の件でない場合や、次の勤務者に支障が出なければの場合です。)

しかし、デメリットもあり、退勤して帰宅後時間が経ってから記録作業すると、その分の残業の申請はしづらいのはあります。

その点に関しては上司と相談すれば良いのだと思いますが、メンタル弱の私にはこういうことを相談する勇気がない...

まあ、それほど頻繁じゃないし、時間をかけてやっているものではないので、まあいいか、って感じです。

5-2.空き時間の過ごし方に基本制限はない

次の訪問までに1時間や2時間空き時間があるということもたまにあります。

時間は空いてるけど、事務所に戻るには効率が悪い、時間がもったいない、という場合は近くの好きな場所で待機してもOKでした

記録などのするべきことをしっかりしていたら、コンビニやカフェなどに立ち寄ったりするのも可能です。

※もちろん、やるべき事務作業がある場合はなるべく事務所に戻って仕事しなければなりません。

訪問の合間に一息つけるのは、一人が気楽で好きな私にはありがたいものでした。

まとめ

在宅訪問看護の魅力やリアルな特徴は他にもいろいろありますが、

今回の記事のまとめとしてはこの通りです↓

ポジティブ面注意点
①家で安心して過ごせるように支援できるやりがい

②一人一人のケアの時間がしっかり確保されている

③事務職員がいないと自分たちで事務作業しなければならない

④定時で退勤できる時が多い

⑤訪問記録の仕方は時間と場所に規定なし
空き時間の使い方は自由で良い時がある
①看護師の見解よりも、利用者の生活歴や意思を尊重した支援が必要

②利用者の状態や看護師のスケジュール的にじっくりケアできないこともある。

③事務処理や訪問看護の仕組みに強くなる

④残業が多さはむらがある(事務所によりけり)

⑤家に仕事を持ち帰れるが残業申請はしづらい

「目次3.」と「目次4.」からみえる★在宅訪問看護に転職前の要チェックポイント★

「事務作業よりも訪問に集中したいな」「残業はなるべくしたくないよ」

という方は、求人情報にのっている「残業時間」以外にも、

「事務員の有無」「利用者の数」「1日の訪問件数」といったあたりも考慮した方が良いと思います。

おわりに

以上が在宅訪問看護をやってみての私なりの入職後ギャップ(前編)でした。

リアルに書いたことなので、もしこれを読んでショックを受けてしまった方がいたらすみません。

しかし、記事の冒頭でも述べたように、これは私の会社で勤めた上で感じたことであり、

会社によって方針やルール、働いてみた感じ方も違うと思いますので、一例として参考にしてください。(特に目次3.4.5.)

良いようにも良くないようにも書きあげましたが、分かってほしいことは、最終的に自分のためにもなって経験を踏めて良かったと思っています。

この記事が在宅訪問看護に興味がある方に少しでも参考になればと思います。

後編の記事も作成次第あげるので、それもぜひチェックしてくださいね。

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