一番忘れられないインシデント
私は同僚と比べてインシデントを起こすことが多い看護師でしたが、
その中でも一番忘れられない苦い思い出となったインシデントは、与薬のインシデントです。
それは、受け持ち患者の一人に朝の内服を二回分与えて飲ませてしまったことでした。
(もちろんわざとではありません)
インシデントの背景
事件は看護師1年目のある夜勤の終了目前で起きました。
夜勤デビュー後、徐々に受け持ち人数を増やしていき、先輩方と同じ人数を受け持てるようになったばかりの頃でした。
夜勤は3人体制で、最大受け持ち16人。
受け持ち全員のバイタル測定、点滴、血糖測定、配膳、食事介助、おむつ交換、翌日の退院やオペの準備、オペ後の対応、緊急入院、急変、頻回なナースコール、コンプライアンス不良な患者への説得など。。。
てんやわんやで息をするのも忘れ、動悸もするほど忙しい。
まだ夜勤ひとり立ちしたばかりの私にはとっても負担が大きく余裕がなさすぎでした。
全然業務が間に合っておらず、休憩中にも仕事して、全然休憩してない。
朝になる頃にはもう頭回っていないような状態でした。
なぜ2周いった!?インシデント発生の瞬間
日勤への交代まであと1時間を切りもう少しだというところ
朝食後の内服を配って回っている時に事件発生。
1日分の薬を自己管理できる患者には、朝食後に一日分の薬を渡しています。
こんな感じです↓(微妙なクオリティ..伝わるかな…汗)

これを配薬カートの上に置いてカートを押して回って患者に配薬しています。
大部屋の患者Aには1日分の内服を渡して、同室の他の患者には朝の分だけ配って回りました。
その病室全員に配り終えたのでそのまま病室を出れば良かったものの、
なぜか私は2周目に突入。
そして最初に1日分の内服を渡した患者に、配薬カートから明日の朝の内服を取り出し、また渡してしまったのです。
患者Aは認知症ではないですが、看護師の指示には素直に従い、何の疑いもなく飲んでしまいました。
そして部屋を出た直後、はっとしました。
「え、待って待って待って。Aさんって私さっき1日分渡したよね。やばいやばいやばい×50
またあげちゃったよ!!!」
部屋に戻り、最初に渡した1日分の入れ物の中身を確認すると、
やはり朝の分はすでに内服済みで空っぽ。
患者Aに一度に2回分の内服をさせてしまいました。
朝の内服は1回10錠くらいあったので、合計20錠くらい、、、
——とんでもないことをしてしまった。なんで2周したのよ自分。ぼーっとしすぎだ。情けなさすぎる。
どんな顔して詰め所に戻ればいいの。
リーダーに報告したら、みんなに知られたら、どんな顔をされるだろう、
すごく呆れられて怒られるだろうな、嫌だな。——
夜勤明けでの心身の疲労もピークで、心が折れてしまいました。
猛烈な反省と後悔
ナースステーションに戻り夜勤と日勤のリーダーに報告。
やはり、びっくりされとても怒られました。
怒られたことも辛かったのですが、
リーダーの先輩が、
「インシデントしちゃったのもいけないけど、それよりその後患者さんのところ見に行った?状態変わってないかなって観察したり、バイタル測ったりした?」
そう言われ、またはっとしました。
そういえば自分がミスしたことにショックを受けてばかりで、全然患者のことを考えていなかった。
看護師としてそれはいけないわ、最低だわ。とさらに落ち込みそうなのをこらえて急いで患者の元へ行きました。
不幸中の幸いで、患者の状態は特に大きく変わることはありませんでしたが、
もし状態が悪化していたらとぞっとしました。
なぜさっき薬をあげた患者だって気づかなかったんだろう。
なぜしっかり日付を確認しなかったんだろう、
なぜミスした後に患者の心配ができなかったんだろう、
自分の看護師としてのプロ意識の低さを痛感しました。
夜勤明けからずっと、
このままじゃいつかまた重大なミスをして患者を殺してしまいそう、看護師向いてないんじゃないか、
恥ずかしいし仕事するのこわいし、もう行きたくない、と泣いて落ち込んでいました。
でもなんとか頑張って次からも仕事に行った自分は偉いと褒めてあげたい。
どうすれば良かったのか
このインシデントに関して、
私は与薬時の6Rの確認を徹底するということができていませんでした。
与薬の際の6R(Right):正しい①患者、②薬剤、③目的、④用法、⑤容量、⑥時間
参考(厚生労働省 与薬の技術 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/09/dl/s0918-7g_0001.pdf)
それからはどんな状況でも、6Rの確認をするクセをつけました。
当たり前のようで、意外と抜けちゃうところ。
おかげで慎重になりすぎて、仕事が余計に遅くなってしまいましたが。
まあ、またあんなミスするよりかはマシか、と思って安全優先で。
というのがこのインシデントの学びです。
終。