今回のインシデント実例は、膀胱留置カテーテル挿入についてです。
この手技におけるリスクの知識不足と、勝手な思い込みからインシデントは起きました。
背景
これもまた1年目の頃のお話。
膀胱留置カテーテル挿入の実施について先輩からも自立OKをもらったばかりの頃です。
ある日勤の日、受け持ち患者の中に朝一の9時に手術予定の男性患者がいました。
膀胱留置カテーテル挿入が必要でしたが、まだされていなかったため、急いでしなければいけない状況でした。
まだ日勤で出勤したばかりで慌ただしい時間帯でしたが、私はこの時期自立OKをもらっていたので積極的にしなくてはと思い、自分がやりますと申し出て一人で実施にむかいました。
8:40頃訪室すると、男性患者はトイレを済ませたばかりだとのことでした。
事前にトイレは少し待つように言っていなかった自分も悪いですが、
尿全部出しちゃったか~と少しがっかりしました。
しかし9時出棟なので、もう時間はありません。急いでやらなくてはないのですぐに実施にとりかかります。
カテーテルを尿道に挿入すると、尿流出が見られません。
待っててもお腹を押してみても変わらず、何も出てきません。
うーん、どうしよう。
大丈夫だろう…インシデント発生
ここからが私の誤ったポイント。
ある程度カテーテルの長さは入っているし、挿入時の抵抗もなかったし、排尿直後だから尿流出はないものだろう。なので多分バルーン固定して大丈夫だろう。
そう思って固定水を注入してしまったのです。
その後もカテーテル内には何の変化もなし。
私はまったく危機感なく、
うーん、どうしたらいいんだろう。先輩に聞きに行こう。と病室を出ました。
先輩に状況を報告すると、先輩はとても慌てて「ダメダメダメ!早く戻るよ。」
一緒に足早に病室に戻りました。
先輩がすぐに膀胱留置カテーテルの固定水を抜き、再度膀胱留置カテーテル挿入をやり直し。
なかなか尿出てこないな~としながらも、尿流出をきちんと確認してからバルーン固定してもらいました。
私は先輩が慌てて病室に戻ってから膀胱留置カテーテル挿入が終わるまでを見ているだけしかできませでした。
反省会で事の重大さに気づく
その後も患者の状態は変化なく、その他トラブルもなく手術に出棟できましたが、その後先輩と反省会をしました。
自分の行動のどこが間違っていたのか、それはなぜ間違っていたのか、どんなリスクがあるのか。
先輩に問われてもきちんと答えられませんでした。
「尿流出を確認してからバルーンを固定をする」が正解だということは、手順書を見て記憶はしていたが、大丈夫だろうと軽率に無視してしいました。
出棟時間がすぐに迫ってきていたので、焦りもありやってしまったのだと思います。
しかしなぜそうしないといけないのか、それを守らないとどれだけ危険なのかを分かっていなかった。
調べると、
尿道内でバルーンを固定してしまうと、尿道損傷を起こしてしまう危険性がある。
出血、尿路感染症、排尿障害、尿路狭窄などの合併症を起こす可能性がある。
ということを知り、
勝手な自己判断で患者を危ない目にあわせていたこと、
症状が出て状態が変わり、最悪の場合、予定通りに手術ができない状況になっていたかもしれない、
この時やっと自分が大変なことをしてしまったと気づき反省しました。
不幸中の幸いで患者の状態は何も変化はありませんでしたが、もし何かあったらと考えると恐ろしい。
本当に何もなくてよかったと心底思いました。
どうすればよかったのか
膀胱留置カテーテル挿入時に尿流出が見られなかった場合
カテーテル挿入の長さが十分か確認する (カテーテル先端を確実に膀胱内まで到達させるため)
一度カテーテルを抜き、時間をおいてから再度挿入してみる(尿がある程度貯まって確認できるまで待つ)
また、勉強不足で臨んだこともいけなかったですが、
時間がないからと焦らず、自己判断でバルーン固定せずに一度中断して先輩に助けを求めに行けば良かったんです。
なぜできないんだろう、そう思いながらも自己判断でやりきってしまうのは危険。
無知ほど危険なものはない。
分からないことはやってしまってから先輩に言うのではなく、やる前に言う。
新人の場合はこれも重要なことだと思います。
こういうところを直さないと、私のインシデントの種は消えないなと痛感し、その後改善しようと日々気を付けていきました。
以上が今回の学びです。
思い返せば当たり前のことなのに、なぜできなかったんだろうね、
と記事を書ている今も思わずネガティブ発動しちゃいました。
私以外にもこんな看護師いるのだろうか…
いないことに越したことはないですね。
もしあなたが今インシデントで落ち込んでいるなら、
私の失敗談をみて
ここにもインシデント仲間がいるー
自分だけじゃないな
って少しでも気持ちが軽くなればいいなと思います。
看護師のみなさん。今日もお疲れ様でした。